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Club 山咲 北新地のお店です。

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〒530-0002 大阪市北区曽根崎新地1-3-30 北新地幸田ビル3F

vol004  005  006   蛍HEADLINE

蛍01

大きな拾い物をした……滅多にない拾い物だ……
拾い物の名は蛍と言う、
6月の始め、降り出した雨を避けるように道裏の路地に逃げ込んだ俺の行き先を阻むように、その娘は雨をしのぎ、傍らに置かれたボストンバックに身を寄せるように震えていた、
「すまない…そこ通りたいんだけど…」
その娘が顔を上げ俺の顔を見つめると、小さくか細い声で、「ごめん…」
と言うと更に身を寄せる、
雨に打たれ寒いのだろうその身はカタカタと小刻みに震えていた、
「…そんなに雨に濡れて…行くとこあるのか?風邪ひくぞ」
「……行くとこなんか無い…あなたも雨に濡れて風邪引くわよ…早く行ってよ…」
その娘は俺の目を見つめると抱えた膝をギュッと抱きしめた、俺にはその娘の瞳の奥に虚無感を感じた、
「下心で言うんじゃないが、俺の家すぐ近くだし、雨宿りがてらに来ないか?」
ある意味新手のナンパにも聞こえるな…と内心思いながらも俺はその娘にポケットから持っていたハンカチを手渡した、
「なんでそんなに優しくするの?」
「こんなにお互い雨に濡れているのに、理由なんているか?…それに君…行くとこ無さそうだし…」
娘は堅くなった表情を少し緩めると、ゆっくり腰をあげ傍らにあったボストンバックに手をかける、
「…雨宿り…うん…雨宿り程度にね…少しお世話になる…ね」
娘は軽くお辞儀をすると頭の上にハンカチを乗せ、走りだした俺の後を追った。 

小さなボロアパートこれが俺の住まいだ、売れない画家が住むには、打ってつけの 家である、
娘を部屋に通すと、窓際に干していた、半乾きのバスタオルを渡し洗濯したての男物のパジャマを渡す、
「後ろ向いてるから、それに着替えてろ」
「…ありがとう………あ、私…蛍…川村蛍…」
「俺は蒼木惣一郎だ…」

雨は更に激しさを増し窓からの視界が悪くなる
「止まねえな……」
「蒼木さん、もういいよ…着替えた…」
さすがに男物のパジャマじゃでかいのだろう、袖口から指先だけを出している、その姿に少し笑いが漏れる、
「ははっ…さすがにブカブカだな…」
「私…チビだから…」
恥ずかしそうに微笑み、ボストンバックを開け中の荷物を出し始める、
……だが荷物から取り出されたのは、奇抜な色の衣装ばかりで、そのほとんどがシースルーの卑猥な物ばかりだ、
「そ…それ…私服なのか?」
凝視したままの俺に蛍はクスクス笑いながら首を横に振り、衣装を取りだし、ヒラヒラと金魚のように俺の目の前に見せつける、

「私ね…ストリッパーなんだ、でも…体小さいし華が無いからってクビになったの…住み込みで働いていたから住むとこなくて……」
「だから、あんなとこに居たのか……
雨宿りを撤回して、お前の働き先が決まるまで、ここに居ていいよ…ああ勿論、その間は指一本触れたりしない…」
蛍はクスッと笑うと嬉しそうに目を細め「ホテルに誘う前の男って、お風呂だけとか…何もしないから…とか言うよね……別に指くらい、いいよ…一宿一飯の恩義あるし…これでも大人の世界はわかってるつもりだし…」
俺は彼女の排他的な言葉に多少ムッとしながら首を横に振る、
「一宿一飯の恩義に体差し出すなんて言わない方がいい…」その時自分が偽善者に思えた、男物のパジャマから体に不釣り合いの二つの膨らみに多少なりとも、ドキリとさせられているのだから………

それから俺達は奇妙な共同生活を始める事になった、
売れない画家の白いキャンバスに鮮明な色を塗り付けた、
夏の始まりだ…、

続く

蛍02

蛍との奇妙な共同生活を始めて、1ヶ月過ぎたある日、俺と蛍は転機を迎えた。
そして今、小さなホールではあるが、踊り子として就職が決まった蛍が嬉しそうに、無い金を工面して小さなパーティーを開こうとしてくれていた。
「蒼木さん!蛍ね、次こそ頑張れる気がするの。今日は就職前祝い!」
蛍は頬を桃色に染めながら、スーパーの安い豚肉のブロックを器用にスライスし、ステーキを作る段取りをしている。
「蛍…実は俺も…」
肉を焼き始め、脂の弾ける音に俺の言葉はかき消された。振り向いた彼女の嬉しそうな横顔を見て、俺の報告などどうでもいいかと思った俺は、小さなテーブルに安いワインとグラスを並べる。
「一応頑張ったんだけど、これで我慢な?」
蛍からの報告を聞き、急いで用意した安いチリワインをグラスに注ぐと、蛍がタイミングよく焼けたばかりの肉を皿に盛り付ける。
「良かったね蛍、ワインぐらいしか祝えねえけど…すまないな」
蛍は首を横に振り、まるで子供の様にはしゃぎながらグラスを持ち上げる。
「気持ちだよ!蒼木さん!おめでとうーの気持ちには素直にありがとうーって!お金じゃないでしょ?こーゆーのって?」
俺に気を使って言った言葉なのか…だが実際の俺にはこれが精一杯の気持ちだったから、嬉しそうにしている蛍のその表情だけで俺は満足だった。
「今度こそクビにならないように頑張らなくちゃ!」
蛍は小さなコブシを握りしめガッツポーズを取っては見るものの、瞳の奥には不安が隠せないらしく、まばたきの回数が極端に早くなっていた。
わかりやすい奴だな…とクスッと笑うと、何を勘違いしたのか
「あ〜、またクビになると思ってるんでしょう!」
とポカポカと俺の肩を叩いてくるものの、その力は、か弱く少し怯えているようにも感じた。
「私…小さいし…華が無いし…踊ることが誰よりも好きなのに、いつも同じ理由でクビになるんだ……」
蛍は眉を八の字にすると、小さく溜息を漏らした。
「なあ…よくテレビや映画に出てる女優って、以外と身長が小さかったりするもんだぜェ? でもさ、デカく感じるよな。なんでだと思う?堂々と演じているか らだと俺は思うぜ。 さっきからお前の話聞いていたら、クビになった事ばかり気にして萎縮してるようにも思えるんだ」

蛍は俯いたまま、注がれたワインを見つめていた。ただ少し図星だったのか、真一文字に結ばれた唇が微かに震えているようにも感じた。
「なあ…蛍、私がトップスターだって気持ちで頑張って踊って見ろよ。
明日、恥ずかしいけど見に行ってやるから……さ?」
「………な…口…聞かないで…」
「え?」
「わかったような口聞かないでよ!!」蛍はテーブルを両手で叩きつけると、目に涙を浮かべながら部屋を飛び出して行った。
俺は蛍を追いかける事も出来ず、テーブルの周りに散乱した料理と飛び散ったワインの流れゆく様を見つめ続けた。


翌日になっても蛍はこの部屋に戻って来た気配は無く、俺は夕暮れまで窓から見え
る雲の流れを眺めていた…
「初舞台…だったよな…あいつ衣装カバン置いて何処に行ったんだよ…バカが…」
仕方なく蛍の衣装カバンを持ち、蛍の働く小さなストリップ小屋に向かうことにした。
ただの拾いものの…ただの同居人…
だが心の片隅では、蛍への愛情が湧き上がって来ていることに、惣一郎は未だ気付いてはいなかった。

続く

蛍03

夜の帷が空を覆いつくすと空には少し寂しげにハーフムーンが月の雫を落とし、次々と夏の夜空に星を散らしてゆく。
惣一郎は蛍が置き忘れていった衣装バックを持ち、蛍の働くショーホールに足早に向かった。
「命より大事なモンなんだろがよ……バカが…。」
惣一郎はショーホールの場所を記されたマッチ箱を握りしめながら、ひなびた歓楽街へと足を向ける。
「あいつ…初舞台だったよな…。」
惣一郎は小さな花屋の前で立ち止まり、しばらく何かを思いついたのか店前に並べられた花を見つめていた。
「初舞台に花でも贈ってやるか……まあ花を貰っても花言葉の意味なんて知らないのだろうけどな。」
惣一郎はクスッと笑うと、蘭の種類であるデンファレの花束を購入し、小さなメッセージカードを添えた。
「あ…早く行かないと衣装無いって右往左往してるだろうしな。」
惣一郎は花束を抱え、蛍の勤めるショーホールに足早に向かった。
【プチ・エトワール】
蛍の勤めるショーホールは、キャパ数50人も入りきれない小さなホールである。惣一郎は蛍の忘れた衣装バックと花束を係員に渡すと、一番後ろの席に座る事にした。
その頃プチエトワールの楽屋では、衣装を無くした蛍が店に置いてある備え付けの服を見つめ肩を落としていた。
「…あたしバカだ…一番大切な衣装バックを忘れて来るなんて…。」
どうみても型の古い、今では誰も着ないような服を見つめ、仕方なくその服に袖を通しかけたその時、係員が楽屋のドアをノックした。
「蛍さん、お届け物ですよ。」
きしむドアを開けると、係員が蛍の衣装バックと花束を蛍に渡し「初日に花束なんて、やるね蛍さん。」
「あ……あの人が来てくれたの?」
「初日だから頑張れよ。」
係員は蛍の肩をポンポンと叩くと、
「開演30分前だ、早く着替えなよ。」
と下着姿の蛍にバックを指差し、部屋を出ていった。
蛍は「ありがとう。」と小さく言うと、花束に添えられたメッセージカードを開いた。

『デンファレの花言葉は“魅惑”お客をお前の魅力で魅惑出来るように、応援するよ。
惣一郎より』

「……蒼木さん……ありがと…。」
蛍は惣一郎のメッセージに勇気づけられたのか、衣装バックから蛍の一番お気に入りの衣装を取り出し、鏡越しに体に合わせた。
「うん!やっぱりこれね!」
「蛍さん急いでくださいよ!」
「はい、すぐ行きます。」

開演5分前とはいえ、座席の前を陣取る酒に酔った常連客が、下品な言葉を連呼し騒いでいる。
「あんな奴らの前で踊るのか…。」
惣一郎は眉間にシワを寄せ、酒臭いホールの天井を見つめ溜め息を一つこぼすと、店内の照明が暗くなりアナウンスが響きわたる。
『お待たせいたしました。本日はプチ ・エトワールにおいで下さり誠にありがとう御座います。今宵も淫靡で妖艶なショーでお楽しみ下さい……。』

客の指笛が何処からともなく響きわたり、惣一郎はただ不安げにステージを見つめていた。
『本日のオープニングダンサーは新人の蛍ちゃん!さあ張り切ってまいりましょう!尚 踊り子さんには手を触れないよう……。』
「踊り子に触れないようって…触れる奴いるのか…。」

店内アナウンスが終わると真っ暗なステージが鮮やかな照明で彩られ、その中から流れる音楽と共に蛍が現れた。
蛍は真っ赤なシースルの衣装を身に纏い、流れるロックのリズムに合わせ小さな体を弾ませながら、半ば最前列の客を挑発するように踊ると、酔った客が蛍になんとか触れるように手を伸ばす。
蛍はクイッと体を反らすと真っ赤なシースルの衣装に手をかけ上半身を露わにする。小さな体に不釣り合いのその膨らみは、照明で艶っぽい桜色に彩られていた。
蛍は二つの膨らみを振るわせると妖艶な笑みを浮かべ、再び最前列に向かいステージのモニターに脚をかけ、小さな紐を解き下半身を露わにする。
肩から真っ赤なシースルの衣装をヒラヒラさせながら、蛍は躊躇う様子もなく秘部に指をかけ小さな薔薇の蕾を腰を揺らしながら見せつけていた。
観客の指笛と歓声に目を閉じ、半ば嫉妬に近い感情を覚えたのか、惣一郎はそのままそのショーホールから静かに立ち去って行った。

「…俺にはダメだ…あんな蛍なんて見たくない…。」
今まで蛍の裸どころか指一本触れる事の無かった惣一郎にとっては、余りにも衝撃的であったのだろう。頭を垂れながら家路に向かった。
部屋に着いても動揺が隠せないのかしきりに胸を押さえ、溜め息ばかりをついていた。
目を閉じれば蛍の裸が目に浮かんでは消え、高鳴る鼓動は惣一郎自身さえも高ぶりを覚えた。
「最低だな……。」
蛍の衝撃的な姿に逃げ出した惣一郎自身が、今では蛍の姿を思い出しながら股間に手を滑らせているのだから……

後悔と自己嫌悪感に包まれながら、自身をティッシュで拭き取ると、その身をごろんと横たわりながら、目を閉じるとそのまま眠りについた。

「……ん…さん…。」
体が重い…んっ…
「蒼木…さん。」
夢なのか幻なのか…惣一郎は手を伸ばしながら幻の実体に触れる。
「蛍なのか?」
「……ん…今日ありがとね、……その…衣装バックと…お花嬉しかったよ…。」
蛍は惣一郎の体の上に覆い被さりながら唇を重ねてくる。
「ほ…蛍…。」
「ね……抱いて…。」
ついさっきまで、自分自身のいやらしい想像の主人公だった蛍が、今 妖艶に微笑みながら惣一郎の髪をかきあげている。
「別人みたいだな…綺麗だよ。」
ショーが終わって、化粧を取っていないのか、真っ赤なルージュが艶やかに光っていた。
蛍は再び唇を重ねて来ると、自らブラウスのボタンを外しながら惣一郎の瞼や耳に唇を這わせた。
安物の香水が鼻をくすぐり、甘い吐息に惣一郎もそれに答えるように蛍の細い体を抱きしめる。
「…ふ…ッ…。」
「本当にいいのか?」
蛍は小さく首を縦に振るとブラウスを脱ぎ捨てた。
夕方にショーで見た小さく細い体に不釣り合いの形のいい乳房が、窓から漏れる月明かりに青白く映える。
たまらなくなった惣一郎は、蛍の体をゆっくり下にし何度も乳房にキスと言うなの花びらを落とした。若い蛍の乳房は弾むように揺れ、硬くなった蕾を舌先で転がすと、甘い声で小さな鳴き声をあげた。惣一郎の指が蛍のスカートをめくり上げ下着ごしに指を滑らせれば、既にそこはしっとりと蜜が溢れているのがわかる。蛍は恥ずかしそうに手で顔を覆い隠したが、惣一郎は下着の中に指を弄ぐりながら蜜つぼを探しあてていた。
淡い茂みの奥から溢れる蜜は、蛍の感度の良さを証明している。
「あ…ッア…んっ。」
次第に荒くなる吐息に惣一郎の指の動きも更に激しくなり、悲鳴に似た喘ぎ声が切なく部屋に響いた。
「蒼木さん……来て…。」
蛍は白く細い指先を惣一郎自身に触れると、そのまま導かれるように体を重ねた。
蛍のそこは熱く、ヒクヒクと痙攣しながら惣一郎のそれに合わせるように締め付けてくる。
月明かりに照らされた二人は無我夢中で何度も性をむさぼった。
体を離れた時には、月は沈み、白々とした空に朝日が昇ろうとしていた。
二人は疲れ果てたのか、そのままの姿で眠りについた。

惣一郎が目を覚ます頃には既に日も暮れ、けだるい脱力感に包まれながら傍らで眠っているはずの蛍を指で探した。
「……蛍?」
惣一郎は眠い目を擦りながら部屋を見回して見るが、蛍の姿は何処にもなく、
小さなテーブルに走り書きされたメモだけが残っていた。

『蒼木さんへ
今までありがとうございました。
出会った時の話、覚えていますか?次の仕事が見つかるまでお世話になるって条件でしたよね。私仕事がちゃんと見つかったし、もう大丈夫です。今までありがとうございました。』

惣一郎はメモを握り締めると、そのまま蛍の働くダンスホールに急いだ。
妖しい色のネオンが交互に光るプチエトワールの看板には、蛍の名は既に無く、不審に思った惣一郎はホールの従業員に蛍の事を尋ねると、ホール従業員は、呆れ顔で首を横に振った。
「蛍さんね…あの人、初日にクビになったんだよ…。」
「なんだって!?」
「なんでもステージの最前列の客のイタズラにキレて客の頭を蹴っ飛ばしたそうだよ。ダンサー以前の問題だね、だから即クビ…前の店でも同じトラブルでクビだったって話だぜ…。」
「なんてことだ…蛍の奴…。」
惣一郎はホール従業員に礼を言うと蛍の行方を探した。
「あいつのクビの原因は…あいつの身体的理由でもなんでもなく、ただ短気なだけだったのか。気づいてないのは、ただ一人蛍だけだって事…か。」
確かに蛍は短気である。確かに蛍が家を出ていった理由も、あの短気さ故だ。
惣一郎は走りながらクスクスと笑い、しまいには人が振り向く程の声で笑いだした。
「あの短気バカの居場所はあそこしかないな…。」
惣一郎は蛍の居場所を確信すると、昨日訪れた花屋でデンファレの花束を再び購入した。
「さて…迎えに行くか、まあ、あの場所でうずくまっているのだろうしな…。」
二人が初めて出会ったあの路地……
惣一郎は路地に身を丸くして潜めている蛍を見つけると、
「悪い…そこ通りたいんだけど…。」
と、初めて交わした言葉を蛍に囁く。
驚いて逃げようとする蛍の腕を掴み、「帰って来い。」と言う惣一郎に、蛍は目にいっぱいの涙を浮かべながら抵抗を繰り返す。
「私は蛍…夏だけの女…蒼木さんを照らすこと出来ないよ…。」
「無理して照らさなくてもいい…側にいてくれてさえいればいい……。」
惣一郎はデンファレの花束を蛍に手渡すと歌の『蛍』を歌いだした。
「ほ、ほ、蛍来い…こっちの水は甘いよ…。」
両手を差し出す惣一郎に蛍の顔は涙でクシャクシャになりながら、その胸に飛び込んで来た。
「私…この花言葉みたいに魅惑することは出来ないよ?」
惣一郎はデンファレの花びらに触れると、微笑みながら蛍の頬に口づけた。
「デンファレには、もう一つの花言葉があってね。」
「魅惑だけじゃないの?」
「ああ…そうさ、もう一つの花言葉はね “お似合いの2人” って言うんだよ…」
蛍は真っ赤になりながらデンファレの花束を抱きしめると、そのまま惣一郎に抱きつき何度も口づけた。
「お前が出ていったあの日、お前に言いそびれた報告があったんだ…俺の絵が売れたんだ…アトリエから依頼が来て、当分はお前くらいは食わせて行ける…だから……側にいろ…。」
蛍は一瞬戸惑う素振りを見せたが、すぐに笑顔を取り戻し、
「貴方だけを照らす蛍でいたい。」
と目を真っ直ぐに見据えた。


空からはポツポツと大粒の雨が降り出し、出会いと同じシチュエーションに、二人は笑いながら
「俺の家すぐ近くだけど来る?」
「雨宿り程度にならいいわ。」
と手を繋ぎながら雨の中を走り出した。蛍はもう夜には光らないけれど、惣一郎という、甘い水の側で二人を照らし続けて行くのだ…これからずっと…。

END
 

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