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Club 山咲 北新地のお店です。

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vol009  010  011  012   欲 望HEADLINE

欲望 其1

人の欲望は計り知れぬ…欲すれば己の壺に欲望と言う名の雫が音を立て、雫を落とす。
だが人間は生まれ落ちた時に天に決められた器を与えられる……そなたにも既に欲望を満たす壺の大きさは決まっているのだ…間違えるな、人間よ……

おかしな夢を見た…欲望が?壺が?
いったい何の事だ?
正月休みに帰省をしたばっかりで、家に着くなり、長時間の車の運転に疲労がピークになったのか、泥のように眠り続けていたのだ。
「疲れてるな俺…だからあんな変な夢を見たのか…」

夢の内容を疲れのせいにして、何年かぶりに会う両親の顔を見る頃には、すっかり夢の事など忘れ去っていたのだ。
都会の生活に少し疲れていた俺は、生まれ育った片田舎の空気や景色の中で過ごしている内に、少しずつ、溜まっていたストレスが薄れていくのがわかる。
俺は帰省している間に子供の頃に遊んでいた川や山に足を向けた。景色は子供の頃と全く変わっておらず、見るもの全てが新鮮に感じた。
河原から実家に向かう砂利道を歩いていると、ひなびた神社が見える。何を祀って
いるのかは知らないが、子供の頃よく遊んだ記憶があった。
「明日あの神社で骨董市があるよ」

いつの間に俺の背後にいたのか、振り向けばそこにはおかっぱ頭で着物姿の童女が神社を指差しながら、邪気のない笑顔で俺を見つめた。
「骨董市?あんなところで?」
「うん、骨董市あるよ…でもいつもは無い…特別だって母さまが言ってた、ほりだしものが出るって言ってた」
骨董品は嫌いではなかったので、その童女に明日少しだけ見てみると伝えると、童女はコクンと頷き、来た方向とは逆に向かい走って行った。
「あの童女は骨董市の事を伝えに来たのか?ははっ、主催者の子供だったりしてな!」
俺は童女を目で送るとそのまま実家に帰ることにした。

両親と夕食をむかえている時に、俺は両親に骨董市の話をしてみた。
「なあ、明日河原近くの神社で骨董市があるそうだな」
母は味噌汁を一口飲むと、そんな話は聞いた事が無いと言った。

俺は確かにあの童女に骨董市の話を聞いた…
明日になって神社で骨董市があればよし、無ければあの童女の質の悪い嘘だと言う
ことにして、俺は早々と床についた。

翌日になって俺は朝食もろくに取らず、神社に向かった。
神社に向かう道は人気もあまり無く、鬱蒼とそびえる木々の影が神社を更に『気味の悪い 』ものにした。

小さな鳥居を越え本殿に向かうと、骨董市が開催されてるにしては人気はまばらだ。
「お兄ちゃん!こっち!」
昨日の童女が俺のジャケットを引っ張りながら、本殿から少し離れた場所に俺を連れて行った。
確かにそこには小さいながらも骨董市が開催されていたのだ。
境内に広げられたそこには、アンティークな時計やら瀬戸物が所狭しと並べられていた。
「へえ〜割と色々あるんだな…」
俺は骨董品を手に取りながらあれこれ見比べていた。
「あれ?これ何だ?」
俺が手に取った其れは、まるでアラジンの物語に出てくる魔法のランプに酷似していた。
「あはは、ここから魔神ジーニーが出りゃ最高だな!」
「さあ…否定はしませんわよ、そのランプはいわく付きとも言われますからね」
「怖いものなのか?」
「さあ…わたくしには分かりませんが…このランプは必ずわたくしの元に戻って参りますの…」
この骨董主はランプを手に取ると堅くテープを貼った蓋を撫で、にっこりと微笑む。
まだ若きその女主人は、妖しげな色香を纏い微笑みながら俺の瞳を見つめた。
「封印が施されてますでしょう?この封印を外した者のみぞ知る…と言うことになりますわね」
「胡散臭いな…でもあんた美人だし、このランプ飾りにしても綺麗じゃないか…よし買った!」
俺はそのランプが怖い物とも思えなかった。寧ろその売り主の美貌につられて買ったと言った方が早かったのかもしれない。俺はランプを手に入れると足早に帰路についた。
「魔法のランプなら夢を叶えてもらうぜ!」

俺は実家に着くと部屋に閉じこもり、そのランプを見つめた。
銀製のランプには、美しい女神とそれに仕える獣が彫刻されていた。
蓋の周りには幾つかの宝石が施されている。
「これでたったの五万なら儲けものじゃないか…」

俺は蓋を堅くテープで巻かれているのが気になり、一気に剥がした。
「鬼が出るか、蛇が出るか!ええい!ままよっ!」
……鬼も出なけりゃ蛇も出ない……ははっ!やっぱ骨董主の悪い冗談か!

……………………。
「わらわを鬼やら蛇やらと同じにしてもらっては困るがな…」
「誰だ!」
振り返ったその目先には、ランプに描かれた女神が、尊大なポーズで立っていた。
「う…嘘だろ!」

「嘘では無いようだな…ほれその証拠にわらわは、そなたの前に現れたであろう?
して願いは何ぞ言うてみよ…」
「魔神ジーニーなのか!?」
「ふんっ!下らぬ!三つしか願いを叶えぬ者と一緒にするでないわ!わらわはそなたの思う欲を全て叶えるもの。」

「俺の欲望を全て叶えるのか!」
「リスクは大きいがな…一つの欲望に対し、そなたの寿命から一年分の命を貰う事になるがな。」

「一年分の命と引き換えだと!?悪魔の取引きみたいだな…」
「なんとでも言うがよい、そなたの寿命がいつまでなのかは、わらわの口からは言えぬ、タブーが幾つもあってな…」

女神から伝えられたタブー其の1
・他人の死を願わぬ事(他人の不幸を願うのもタブー)
タブー其の2
・時を遡る事を願わぬ事
タブー其の3
・女神との性交渉を望まぬ事


但し3つ目の願い事は残りの命と引き換えならば可という事だった。
「ずいぶんタブーがあるもんだな…まあ俺は人を呪ったりはしないさ…ところで女神の名は何と言うのだ?名前を呼びたくても名前を知らないからな」
「わらわには名は無い、持ち主が名を決めるのでな、確か前の持ち主は、わらわの事をフレイアと呼んでおったな」
「北欧神話の美と愛の神ながら、性奔放な女神か……ははっなるほど、じゃあ俺は…魔神ジーニーにちなんで、ジーンと呼ばして貰うよ」
「魔神ジーニーと同じにするなと言っておるに……仕方ない持ち主の決定には逆らえん…好きに呼べ」

俺は不思議なランプを手に入れた。
多少のリスクはあるにせよ、俺はまだ25才だ。多少の欲望を叶えたとて、まだまだ生きられる。存分に夢を叶えさせて貰うぜ。

「わらわを呼ぶにはランプを三度擦り、わらわの名を呼べ……」
ジーンはそう言うとランプの中に消えて行った。
俺はランプを見つめ世界の覇者になった気分がした。

続く

欲望 其2

俺はランプを手に入れた。
そう……こいつは俺の思うが儘に俺の希望を叶えてゆく……

所謂、絶世の美女と巨万の富、それらを手に入れることは簡単だった。
だが俺の欲望はそんなもんではとどまらない。

俺はいつの間にか、「Endless Anbition」を求めだしていた。
例え、俺の選択が失敗していたとしても、こいつにリセットをして貰えばいいのだからな。

「やれやれ……人の欲とは、そこはかとないものじゃのう…」
「また勝手に出てきたのか!」
「そう、うるさく言うな人間よ、わらわとてランプに長いこと閉じ込められておったのだ……封印を解かれている間ぐらい、自由にさせよ…」
ジーンは、この頃、俺が頼み事をする以外にも勝手にランプから出てくる事が多い。
長い間ランプに閉じ込められていたのだから仕方ないのだろうが、最近は頻繁に出て来やがる。
ジーンの姿はランプの持ち主にしか、その姿は見えない。
これが又やっかいで、ジーンと会話している時など、端から見れば、まるで独り言に見えるのだから。
「出てくるのはいいけど、俺が女を抱いているときは出てくるなよ。」

ジーンは長い髪を白く細い指先でかきあげると、ふうっと溜息をつき、アイスブルーの瞳でキッと睨みつける。
「ふん、くだらん!ガキのセックスには興味はないわ!」
「ガキかどうか試してみるか!?」
「ほう……よう言うたな…そなたの残りの命をわらわにくれると言うわけか…」
ジーンは口の端をキュッと上げ、小さくクスッと笑った。

この女を抱くと言うことは死を意味する。
ジーンは最高の美貌と体つきをしていたが、俺はまだまだ死にたくは無い。
そう…まだ俺の欲求は満たされて無いのだから…
「それよりも…ジーン、俺の欲望を叶えてくれないか?」
「新たな望みか?何だ、言うてみよ?
わかっていると思うが一年分のそなたの寿命を貰うぞ…」

「この女だ…名前は須王静香、俺の勤める会社の最大の取引先の須王グループの会長の一人娘だ…」
「………なるほど…まったく、そなたは悪の極みだな…」

須王の総裁は、手広く会社を経営する。
その一人娘を手に入れたらどうなる?
俺は須王の一人娘の写真を見つめながら、こみ上げてくる笑いが押さえられなかった。

「そなたは、これまで、わらわに八つの願いをしてきた…これで最後にするとよい…」
ジーンは俺にそう言い残すとランプの中に消えていった。
「九つめの願いを叶えたとて、俺の年齢に願い分を足してもまだ34歳だろ…普通に若いじゃないか……まるで俺の寿命が短いみたいに言いやがって……女神ってやつは以外とケチなんだな…」

俺はジーンの言葉を聞き流し、来月、帝都ホテルで取り行われる須王グループのパーティーの日取りを、カレンダーに記しを付けた。

「最高の出会いにしてくれよ…ジーン」
俺はランプにキスをすると、黒い渦巻いた何かに包まれる思いがした。

続く

欲望 其3

人には生まれ落ちた時に、その器は決められておる…
それは、わらわの力を持ってしても、器の大きさはかえられぬ………

ジーンは、欲望に取り憑かれたランプの主の寝顔を、悲しげに見つめていた。

「そなたの願い… あいわかった…… 少し、痛い目を見るが、耐えよ…」
ジーンは魔法陣の中に立ち、静かに呪文を唱えた。

深く眠りについている青年の体からは、命の証である青白い炎が浮かび上がる。
呪文を唱えるジーンの体からは、妖狐のような獣が現れ、青年の体から浮かび上がった炎を全て食らいつくした。
獣は舌なめずりをしながら、血のような真っ赤な瞳を輝かせ、何処へと消えて行った。

「……………そなたの願いは叶った…」
ジーンは苦悩に満ちた薄笑いを浮かべると、静かにランプの中に消え入った。

それから数日後、彼は驚くべきチャンスを手に入れた。

彼の上司である笹田部長が、突然の海外出張により、須王グループのパーティーを欠席する事となり、急遽、笹田の直属の部下である彼が代理として、パーティーに出席することになったのだ。
彼はこれがランプの力であることを確信していたが、あえて笹田の前では驚きを隠せない表情と、自分などが代理を務められるか不安な表情を隠さないでいた…
勿論、これは全て彼の計算通りなのだ。
笹田は彼の肩をしっかり掴むと、
「専務と社長も御一緒だから、しっかり頼むぞ!君が頼りなんだからな。」
と不安げな彼を元気づけた。
『いよいよ来たか……』

今回は、お前は痛い目を見るが、なあに死にはせんよ……
パーティーに行く前に、胸に忍ばせる厚さ3センチの本と、同じサイズの鉄板を用意しよ…
鉄板は、丁度本の中程に来るように挟むがよい……

勝手に彼の前に現れたジーンは背後から囁くと、そのまま煙と化して消えていった。
「…鉄板を挟めって…まさか物騒な事に巻き込まれるのか?」
「君?!何を独り言を言っているんだ?パーティーは明後日だ、しっかり頼むぞ」

「はっ!すみません!しっかり頑張ります。『しまった…ジーンの姿は俺以外には見えないんだった…独り言はヤバいな………』 では、部長失礼致します。」
彼は深々と頭を下げ、自分の机に戻ると、手帳にパーティーの日付を赤ペンで記入した。
ジーンの言葉は気にかかるが、成功は約束されたようなものだ。

『今夜はいい女と最上級の酒で、前祝いといくか…』

彼はクッと咽を鳴らすと、湧き上がる震えが抑えられなかった。

続く

欲望 其4

暗闇の中に、浮き沈みしている白い影

俺は女を抱いていた。
女は俺の律動に合わせ、その白い体を震わせて鳴いた。

いや……泣いていたのか…

どっちでもいい…俺にとっては、身の回りにいる女は危険分子だ…
ある夜にジーンが言った……
「今回の願い事を叶えたくば、そなたの周りにおる飾り物を処分せよ…」……と。

俺は、ジーンに願い事を伝えてから暫くの間、身辺整理のため動き回っていた。

女はやっかいだ…別れを切り出した時に、プライドの高い女は、強烈なビンタを食らわし、感情の起伏が激しい奴は、人目をはばからず、大声で泣き出したりもした。
酷い奴になると、金を請求する奴までいた。
そしてこの女もそうだ………
別れる前に抱いてくれ、と崩れ落ちるように泣きながらすがりついてきたのだ。

最後のセックス…
んなもん、なんの思い出にもなりゃしねえのに……
泣いて喚いて、大騒ぎした挙げ句、次に新しい恋人が出来る日にゃ、俺とのセックスも何もかも忘れ去っている。
女とはそういう動物だろ……

ランプを手にするまで、俺にとって、女は、皆可愛い存在だった。心の奥底から止めどなく溢れ出す欲望に、身を支配されてから、俺にとって女の存在は、「道具」にしか思えなかった。
いや………「踏み台」か…………


「……何を考えているの?さっきからずっと上の空…」
「ああ…ごめん…少し考え事をしてた…せっかくの最後の夜なのにな……」

女は、俺の首に白い腕を回すと、もう喋るなとばかり唇を塞いできた。
女から漏れる甘い吐息が、再び俺を誘う。
俺は女の躯に身を沈め、考えていることとは裏腹に、その女の躯を貪った。

ケ・ダ・モ・ノだな、別れを知っていながら抱かれ喘ぐ女も…腹の中で女を小馬鹿にしながら性の欲求を満たす俺も……

ジーンは、部屋の片隅でその様を見つめていた。
「人間とは、ほんに生臭い生き物よのう…見てて飽きぬわ…」
ジーンは、悪戯に男の側に近寄り囁いた。
「明日はいよいよ、そなたの記念すべき日じゃぞ…励むのもほどほどにするがよい…」
「!!…………」

「ふん……覗いていたのか、と言いたげな顔だな……気まぐれにランプから出てきたら、そなたが生臭い事をしていただけの事じゃ。
さて……わらわはもう戻る。明日はわらわも同行するゆえ、そのつもりでな…」
勝手に現れて、勝手な事を長々と話していくジーンに、さすがの俺も慣れたのか、俺は首を縦に振ると、早く戻れとばかりに、シッシと手を払った。
明日には、大きな野望の扉を開く、第一段階………
何が起きるかは、ジーンからは知らされていないが、相当な波乱があるのだろう。
『死にはせんよ……』
ジーンが以前、言い放った言葉を信じ、波乱に満ちた俺のドラマの1ページをめくってみるか………

暗闇の中に、浮き沈みする白い影、
俺は女を抱きながら、心の中でどす黒い笑いを浮かべていた…………

続く


 

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